新規事業のアイデアの創出をするイベントにいくつか参加した事があるのですが、自分のネットワークを活用したアイデア創出のイベントを開催したいなと考えています。実施するにあたってのコツややり方などを教えて下さい。
オープンイノベーションという多様性をうまく活用した事業創出については日本においても注目されており、あちこちに有名なイベントがありますよね。
アクセラレータープログラムのように時間をかけながらやるものもありますが、今回は1日や2日間といった短い時間で集中的にアイデア創出を図る手法について学んでいきましょう。
新規事業開発におけるアイデア創出の方法 アイデアソンとは
アイデアソン(Ideathon)とは、アイデア(Idea)とマラソン(Marathon)を掛け合わせた造語で、アイデアとマラソンを合わせてアイデアソンと名付けられた。アイデアソンでは回ごとに特定のテーマについて、様々な分野の人々が集まって、グループなどでディスカッションを通じて、新たなアイデアを創り出したり、最新のデジタル機器や技術をビジネスでどうやって生かすか、ビジネスモデルの構築などを2時間や1~3日間などの短期間でアイデアをブラッシュアップしていくことさす。 アイデアソンはハッカソンの前の段階のディスカッションとして位置づけられていたが、近年では、アイデアソン単独で開催され、エンジニアだけのハッカソンより参加の敷居が下がっており、学生の参加も多くみられるようになった。
WikiPediaより
アイデアソンは上記の通り様々な業界のアイデア創出を目的としたイベント自体を指す言葉ですので、やり方やメソッドを定義するようなものではありません。
私が過去に主催したイベントではGoogle Venturesが提唱しているデザインスプリントの手法を取り入れたものを開催した事があるので、その手法を紹介したいと思います。
新規事業開発におけるアイデア創出の方法 デザインスプリントとは
デザインスプリント(design sprint)は、新製品、サービス、または機能を市場に投入する際のリスクを減らすことを目的として、 デザイン思考をベースにした、時間制約のある5段階のプロセスである(Googleでのオリジナルは6段階)。 2007年ごろ、GV (以前のGoogle Ventures)でJake Knappを中心にJohn ZeratskyとBraden Kowitzが関わって開発されたものがオリジナルであり、ボストンを拠点とするユーザーエクスペリエンスエージェンシーのFresh Tilled Soilなど、多くのデザイナーによる独自の作品を通じて発展した。
WikiPediaより
大まかにいうとデザインスプリントは以下のような特徴があります。
- 短い時間で区切り、繰り返す
- 目の前の作業を明確に定義する
- 1人で考える時間と異なる意見を取り入れる時間がある
- 投票時は無言で
- 時間厳守(時間超過したら打ち切られる)
アイデアを創出するという意味では、ブレインストーミング(ブレスト)という手法を使う事も多いと思いますが、こちらは「自由に話す」「発散させる」「最後はフワッとしがち」という点あたりが特徴としてありますので、明確なアウトプットを目指しながら突き進むという意味で異なるものですね。
新規事業開発におけるアイデア創出の方法 準備から開催までのポイント
本家のデザインスプリントは1週間かけて実施しますが、今回紹介するやり方は1日でのやり方になります。上記で触れた通り、1日でゼロの状態からピッチができる状態まで駆け抜けますので、脳の疲労が半端ないですが、得られるものも大きいと思います。
事前準備
テーマ決め
事業企画の中身については当日、メンバが集まって議論しながら創出すればよいのですが、何もお題がない中でゼロの状態から始めてしまうと、1日という事もあり辛いものがあります。
例えばでいうと、「ヘルスケア」という領域や、ヘルスケアの領域の中での「健康・未病」や「医療の高度化」「介護・共生」などサブカテゴリくらいは決めておいた方が議論はしやすいと思います。
この後にあるメンバ集めについても例えば「ヘルスケア」で「医療の高度化」というテーマであったら、医療業界の事業者や医師・看護師など医療従事者やアカデミア、医療業界に身を置いているスタートアップなどを集める必要が出てきますので、やはりある程度のテーマ設定は重要かと思います。
メンバ集め
自分が所属している組織や単一の事業者に協力依頼をするのではなく、色々な立場の方を参加させ多様性を出す事が大事です。ここでのメンバ集めが当日の盛り上がりや尖ったアイデアが出せるかという成果に直結しますので、非常に重要です。
メンバが集まり始めたら以下のようなExcelを作成してリスト化します。
単に名簿を作るだけでなく、そのメンバが担う役割をプロットしておくのがよいでしょう。
チームについては大体5~6チーム程度、各チーム5~6名程度がよいと思います。
従って、アイデア出しに参加するメンバは25~35名程度、運営に携わるスタッフが代替5~6名くらいとすると総勢40名くらいで実施するイベントという事になります。
各チーム、同一所属のメンバは可能な限り別々のチームになるように工夫して異なる所属のメンバが一チームに集まるようにします。ただし、各チーム内に時間通りに以下で説明するスプリントを進めていけるファシリテーションスキルを持ったメンバをチームに必ず1名はアサインするようにしましょう。
この配慮がないと途中で力尽きて脱落するチームが出る事になってしまいますので、必ず押さえた方がよいポイントです。
アイデアソンに必要な人・物のリストアップ
アイデアソンの運営に際して、大きいものから小さいものまで必要なものがありますのでリストアップをして調達をします。細かくはイベントごとに異なると思いますが、大まかに必要そうなものは以下の通りです。
上記書いてから気づきましたが、コンテストのようにやるのであれば上記に賞品代や事業化のための支援金が追加されたりする場合もありますね。いずれにしても自前でイベントをやる場合はそれほど高額にはならないかと思います。
ファシリテーターは社内にスキルや経験がある人がいればよいのですが、そうでない場合は無理やりアサインするのはやめておいた方がよいです。単に人前で話すのが得意な人や明るい人みたいな基準でアサインするのも避けるべきでしょう。こうしたイベントを盛り上げながら進行するのは特殊スキルです。お金を払ってでもプロをアサインすべきと思います。
大まかなアイデアソンの1日の流れ(タイムスケジュールの作成)
今回は1日のアイデアソンの例ですので10時~19時という時間軸で構成する例を紹介します。
ご覧の通り休憩はありますが、以下で説明するスプリントを6回回しつつ、最後には完成させたリーンキャンバスを元に簡易ピッチ資料を2時間で作り上げるというイベントになります。
- 10時集合・オリエンテーション
全体スケジュールや、スプリントの回し方などの説明
- 10時半スプリント(1回目)
事業案導出
- 11時スプリント(2回目)
事業・サービス名、コンセプトの決定
- 11時半チーム内での自由に使える時間
バッファとして使う時間
- 12時休憩
- 13時デザインスプリント(3回目)
課題・顧客セグメント
- 13時半デザインスプリント(4回目)
独自の価値提案・ソリューション
- 14時デザインスプリント(5回目)
チャネル戦略
- 14時半デザインスプリント(6回目)
ビジネスモデル(収益の流れ、コスト構造)
- 15時休憩
- 15時15分ピッチ準備
PowerPointでピッチ資料を作成
- 17時15分各チームのピッチ
5分ピッチ、QA
- 17時45分懇親会、審査開始
- 18時45分審査発表、記念撮影
- 19時クロージング
デザインスプリントでは上記でリーンキャンバス上の上記でプロットされたエリアを各スプリントごとに以下の要領に従って埋めていきます。
リーンキャンバスのおさらいやピッチ資料作成時のポイントのおさらいは以下の記事でご確認下さい。
実施形態
新型コロナ前は実際に集まりながらイベントスペースなどを貸し切ってすし詰め状態でやったものですが、ニューノーマルとなった今ではZoomなどを利用しての完全オンライン開催が主な実施形態になっているかと思います。
Zoomであればブレイクアウトルーム機能がありますので各チームでの作業も支障ありませんし、基本的に本記事で紹介している内容についてはそのまま活用できると思います。
スプリントの回し方
スプリントを実施するにあたって、初めての方は色々と戸惑うかもしれませんが、以下にスプリントのコツを挙げておきます。この辺りのコツを参考にリラックスして臨んでもらえるとよいと思います。
- いきなり突飛なアイデアは出ないものである
- 知識や経験をひたすらアウトプットし続ける(頭の中にあるものをすべて吐き出す)
- 他の人のアイデアを盗む(掛け合わせる、組み合わせる、連想する)
- お互いの意見を否定しない
上記を1セットとして、例えば最初のスプリントでは「事業アイデア・テーマ導出」、2回目のスプリントでは「事業・サービス名、コンセプト」、3回目のスプリントでは「課題・顧客セグメント」・・・というように、それぞれのスプリントのお題を設定し、ひたすらスプリントを繰り返します。
ノート作成(5分)
まずは個人ワークです。
A4用紙か付箋をチーム内のメンバに配ります。
とにかく自分のアイデアを上記の紙にひたすら書き出します。
ここでのルールは以下です。
- おしゃべり禁止
- アイデアや情報をひたすら書き出す(最低限読める文字であれば汚くてもOK)
- 箇条書き、マインドマップ、図、イラストなんでもOK
アイデア提出(5分)
続いて、ノート作成で書いた断片的な情報を他人に説明できる形に整理をします。
リーンキャンバスのフォーマットの該当のフレームに書き込んでいくのがよいでしょうね。
投票(5分)
時計回りにアイデア提出で書いた紙を隣のメンバに回していきます。回ってきた紙に記載されている内容で、「これはよい!」と思うところに、ペンで○印をつけます。何個○印をつけても構いません。
ディスカッション(5分)
ここでやっとおしゃべりがOKになります。
これまで各メンバが○印をつけたそれぞれの紙を真ん中に出してみんなで俯瞰します。
○印の多数決でよいものを決めるのではなく、○印の多いものを優先的にみんなで意見を出し合って、チームとしての統一見解を決めます。時間内に決めるという意志を持つことが大事です。
清書(5分)
採用したアイデアをチームの意見としてまとめます。腹案を用意しておいてもよいかもしれません。
後々、リーンキャンバスとしての構成要素となりますし、ピッチ資料作成時のインプットになる情報になりますので簡潔にわかりやすい表現でまとめるのがポイントです。
コメント
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