新規事業開発の知財戦略 特許の基礎知識

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知財・特許戦略の解説 事業企画の基礎知識
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駆け出しプロデューサー
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新しいサービスを検討している中で「特許申請はしないの?」と聞かれました。特許と聞くと「ものすごい大発明」というイメージで考えた事もないのですが、どのようなものが特許の対象となり得るか教えてもらえますか?

BizDevPro
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確かに特許というと大発明でなければならないと思いがちですが、実は日本国内においても1日数百~数千件出願されており、ちょっとしたアイデアや工夫から出た発明が多いと言われています。
上手に知財戦略が描けるよう基本を押さえておきましょう。

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新規事業開発の知財戦略 特許の基本知識

特許とは、「発明」を保護する制度です。特許制度は、発明をした者に対して、国が特許権という独占権を与えることで発明を保護・奨励し、かつ、出願された発明の技術内容を公開して利用を図ることで、産業の発達に寄与することを目的としています。

特許権とは、特許を受けた「発明」を権利者が、一定期間独占することができる権利

発明とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの

発明の定義も上記の説明ではよくわからないと思いますので、分解すると以下のような解釈となります。

  • 自然法則を利用
    ゲームのルールや商売方法のように人為的な取り決めであって、「自然法則」でないものや、エネルギー保存の法則に反する永久機関、「自然法則」そのもの、経済法則、必勝法法、問題の解き方、などは、特許法上の「発明」になりません。
  • 技術的思想
    具体的な手段であり、誰がやっても同じ結果が得られるものを指します。
    個人の熟練によって得られる技能などは該当しません。
  • 創作
    新しいものを創り出す事が求められるため、発見しただけでは該当しません。
  • 高度
    容易に創作できるものは該当しません。

色々と書きましたが、基本的にはソフトウェア・システムであって、そこに技術的な工夫が施されていれば発明であると言ってよいと思います。
この「発明であること」は第1のハードルとなりますので非常に大切です。

以下のいずれかに該当する場合は発明である可能性がありますので、一つのチェックリストとして活用してみてはいかがでしょうか。(以下の例はJISA「SEのための特許入門(改訂第5版」より引用)

  • 製品カタログ等に記載するような、ユーザーに対する技術的なセールスポイントがある
  • 類似の他社システムと比べて優れている点がある
  • ユーザや顧客のニーズに応えたプログラム・システムである
  • 従来のシステムには無かった新しい機能を追加した
  • コンピュータ処理上の工夫で、処理速度や信頼性が向上した
  • インターフェースの改良で使い勝手が改善した
  • 従来には同種のアプリケーションはなく、新しい製品・サービスである
  • 人手が介在していた処理を自動化して大幅な処理改善を達成した

ちなみに「知的財産」は英語でいうとIP(intellectual property)、特許はパテント(Patent)と呼ばれたりします。

新規事業開発の知財戦略  特許出願できる発明の種類

特許取得するためには、「新規性」「進歩性」「先願」が要件として必要になります。これらの3条件が特許を取るにあたっての第2のハードルとなります。

  • 新規性
    特許出願前に日本国内・国外で①「公然と知られた発明でないこと」➁「公然と実施された発明でないこと」③「刊行物やHPで公開された発明でないこと」が求められます。
  • 進歩性
    通常の知識を有する人であれば思いつくような発明でない事が求められます。人に「なるほど!」と思わせる技術的な何かが必要なのですが、以下のようなソフトウェア特許の実例と自身のアイデアを照らし合わせてみるとよいと思います。
    1.クラウドにおけるサーバ復旧技術(SCSK)
    2.業務効率化と信頼性向上を図ったEDI(日立システムズ)
    3.事前準備設定できるジョブ運用管理技術(みずほ情報総研)
    4.支払人を特定できる振込処理技術(三井住友銀行)
    5.インターネット・フィルタリング(ヤフー)
    6.SNSユーザに関するニュース配信(フェイスブック)
    7.製鉄所に適用したAR(拡張現実)(新日鉄住金ソリューションズ)
  • 先願
    まだ特許出願されていない発明である事が求められます。要は早いもの勝ちです。

「新規性」については、特許出願前に自社ホームページや展示会等で対外向けに公開してしまった場合、新規性が喪失されてしまいますので注意が必要です。

UI/UXも知財権(特許、意匠、商標など)で保護する事が可能です。UI/UXの権利保護がない状態ですと容易に他サービスに模倣され、ユーザー離れを誘引してしまいますが、UI/UXを保護する事により他サービスによる模倣を防止し、ユーザー離れを防止する事が可能です。

ビジネスモデル特許

ビジネスモデル特許とは、仕事の仕組みに採り入れられるソフトウェアやシステムなどの新しい技術に与えられる特許です。新しいビジネスの手法などのビジネスモデルそのものに対するものではありませんので、注意が必要です。

ビジネスモデル特許の位置づけ

ソフトウェア特許との違いを書くとすれば、ソフトウェア特許は「コンピュータ等のハードウェアを用いて具体的な情報処理を実現するソフトウェアのアイデア」であり、ビジネスモデル特許は「ITを用いて、ビジネスやサービスの方法を実現するシステムのアイデア」に関するものと説明できます。

ただし、前述の通り、どちらもソフトウェアを利用して情報処理を実行するという点で変わりはありません。

新規事業開発における知財戦略の重要性

経営資源を考える際、ヒト・モノ・カネ・情報にフォーカスがあたりがちです。知財も非常に重要な経営資源ですが、軽視される事も少なくありません。特に新規事業や新規サービスにとって知財は破壊的技術やアイデアという点で強力な武器であり唯一の価値であるとも言えます

以下のグラフは平成29年度 特許庁産業財産権制度問題調査研究報告書「スタートアップが直面する知的財産の課題および支援策の在り方に関する調査研究報告書」という文書からの引用ですが、大学発スタートアップの意識は高いものの、大企業からのスピンアウトや純粋なスタートアップの意識は高いとは言えないのが現状のようです。

平成29年度 特許庁産業財産権制度問題調査研究報告書「スタートアップが直面する知的財産の課題および支援策の在り方に関する調査研究報告書」より

言うまでもありませんが、知財は事業の差別化や様々な企業との提携の足掛かり、企業価値の評価などに直接影響しますので戦略的に創出し確保する必要があります

今回の記事は特許出願の説明と共に解説しているので知財戦略≒特許出願と捉えてしまうかもしれませんが、特許出願すると出願から1年半で公開されますので、公開されてもよいかが一つの判断ポイントとなります。逆にクローズにブラックボックス化する事で技術やノウハウを秘匿化する戦略もあります。この場合、隠し通す事ができるのかという点が判断のポイントになるでしょう。

平成29年度 特許庁産業財産権制度問題調査研究報告書「スタートアップが直面する知的財産の課題および支援策の在り方に関する調査研究報告書」には特許の出願を始めとする知財戦略を描いたタイミングに関する調査結果も載っていますが、創業前に知財戦略を描いていた企業は半数以下と少なく、まだまだ早期に知財戦略を描く意識は高くない傾向にある事がわかります

平成29年度 特許庁産業財産権制度問題調査研究報告書「スタートアップが直面する知的財産の課題および支援策の在り方に関する調査研究報告書」より

ステージゲートで事業創出プロセスを管理するにあたり、早期のゲートで特許出願の可能性など知財戦略を問う仕組みを構築する事が求められると思います。

NDA(秘密保持契約)の注意点

他社と協業する際、秘密情報を扱う際にはNDA(Non Disclosure Agreement:秘密保持契約)を締結しますが、NDAの締結や秘密情報の受領には注意が必要です。
前述した通り、特許出願してから1年6か月後には出願内容が公開されますので、NDAを締結して他社から取得した秘密情報を特許明細書に書いて出願してしまった場合、NDA違反になるリスクがあります。みやみにNDAを締結する事が特許出願の足かせとなってしまう事もありますので、注意が必要です。

新規事業開発における知財戦略に役立つ情報

知財戦略を検討する上で役立つ情報について紹介しておきます。

スタートアップの知財コミュニティポータルサイト
https://ipbase.go.jp/
・・・スタートアップが知財戦略を考える際に参考になる情報が集まっています。

特許情報プラットフォーム:J-PlatPat
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/
・・・特許・実用新案、意匠、商標について検索する事ができるサイトです。

JISAが出している以下の本は非常に参考になります。この記事を書く際も参考にさせていただきました。

コメント

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