新規事業を担当する事になりましたが、これまで手探りで進めてきたので自分がどこまで事業を進められているかもわかりませんし、何か急なタスクや変化があった時にも後手になってしまい、バタバタしています。どうすればこうした状況を脱却できるでしょうか。
新規事業開発は変化も大きく必ずしも計画通りにいかない事の方が多いですが、大まかな進め方やプロセスはパターンがありますので、WBSやタスクレベルで事業企画初期からローンチまでを見通す事が大切だと思います。
今回紹介する内容やExcelのサンプルを一つの物差しとして自分なりのテンプレートを作ってみて下さい。
新規事業開発をWBS・タスクレベルで管理するメリット
私はシステム開発のプロジェクトを複数経験した事があるのでWBSで物事を管理する事は慣れっこなのですが、こうしたプロジェクト型で物事を進めるようなお仕事ではない方にとってはあまり馴染みのない概念や言葉なのかもしれません。
WBSという言葉の定義やWBSで作業を管理する事のメリットについて解説をしておきます。
WBSとは
WBSとは、プロジェクトマネジメント(プロジェクト管理)で使われるもので、プロジェクトマネジメント(プロジェクト管理)する上で必須のツールと言えます。Work Breakdown Structure(作業分解構成図)の頭文字を繋げた略称で、そのままアルファベット読み(ダブリュービーエス)します。
簡単にいうと、プロジェクト全体を細かい管理可能な単位に分解し構造化する手法の事です。
WBSでプロジェクト管理をするメリット
WBSで作業を定義する事で、大きく人によって解釈が異なる作業の定義から、より細かい単位で作業が定義される事になります。感覚ベースで作業を管理するのではなく、作業の漏れや抜けなどを自分自身でもチェックする事ができますし、チームで仕事をする際も認識齟齬のようなコミュニケーションロスを抑止する事にも繋がります。
先行きが見通せていない、自分の立ち位置が不明確な状態ですと仕事をしていても不安になると思います。特に新規事業開発は先行きが見通しづらいですし、変化も大きな領域であるため、こうしたストレスから身を守るためにもWBSでのスケジュール管理を身に着けておいた方がよいと思います。
新規事業開発・事業企画のWBS・タスクサンプル
新規事業開発や事業企画の書籍を読みましたが、体系的にWBS・タスクを網羅的に記載されている本で最も良いなと思った本は、スティーブン・G・ブランク氏の「アントレプレナーの教科書」です。
本で紹介されている新規事業開発のプロセスをベースにExcel上でWBSのサンプルを作成しました。
WBSの全体像は以下のようになっています。
記事中ではWBSのアウトラインのみ紹介しておりますが、ダウンロードできるExcelにはWBSで必要な項目(担当、開始日、終了日、期限、ステータス)もつけていますので、データとしてお手元に欲しい方は最下部よりダウンロード下さい。
プロセスやタスクの中身については今回は解説していませんが、別の機会に別記事で解説したいと思います。
「アントレプレナーの教科書」ではステージゲートの話までは解説されていませんでしたが、ステージゲートプロセスとの対応も定義してみました。(私独自の定義ですのでご参考まで)
ステージゲートプロセス | WBS1 | WBS2 | WBS3 |
ステージ1 アイデア検証 | 顧客発見 | 仮説記述 | 製品仮説 |
流通チャネルと価格の仮説 | |||
需要開拓仮説 | |||
市場タイプ仮説 | |||
競合仮説 | |||
ステージ2 課題・ソリューションの検証 | 仮説の検証と洗練 | 初回の顧客訪問 | |
課題プレゼンテーション | |||
顧客についての理解 | |||
市場知識 | |||
製品コンセプトの検証と洗練 | 初回の現実性確認 | ||
製品プレゼンテーション | |||
さらなる顧客訪問 | |||
第2回現実性確認 | |||
初期のアドバイザリーボード | |||
確認 | 課題の確認 | ||
製品の確認 | |||
ビジネスモデルの確認 | |||
繰り返し、もしくは次のステップへ | |||
ステージ3 コンセプト検証(PoC) | 顧客実証 | 販売の準備 | バリュープロポジションの明確化 |
暫定的な営業資料計画の準備 | |||
暫定的な流通チャネル計画の作成 | |||
暫定的な営業ロードマップの作製 | |||
営業のプロの採用 | |||
経営幹部の意識合わせ | |||
アドバイザリーボードの公式化 | |||
エバンジェリストユーザーへの販売 | エバンジェリストユーザーへの訪問 | ||
営業ロードマップの改善と実証 | |||
流通チャネルへの販売 | |||
企業と製品のポジショニング | 製品ポジショニング | ||
企業ポジショニング | |||
アナリストとご意見番向けのプレゼンテーションの作成 | |||
確認 | 製品の確認 | ||
営業ロードマップの確認 | |||
流通チャネル計画の確認 | |||
ビジネスモデルの確認 | |||
繰り返し、前のステップへ戻る、もしくは次のステップへ | |||
ステージ4 ソリューション開発 | 顧客開拓 | 市場投入の準備 | 市場タイプに関するアンケートの作成 |
市場タイプの選択 | |||
顧客開拓と売り上げに関する初年度目標の設定 | |||
企業と製品のポジショニング | 広告代理店の選定 | ||
内部および外部からのマーケティング監査の実施 | |||
ポジショニングの市場タイプへの適合 | |||
企業の市場参入/製品の市場投入 | 市場タイプに応じた市場参入・市場投入方法の選定 | ||
聞き手となる顧客の選定 | |||
メッセージ伝達者の選定 | |||
メッセージの作成 | |||
メッセージの背景の把握 | |||
メッセージに合った媒体の把握 | |||
効果測定 | |||
需要開拓 | 初年度目標に適合する戦略の策定 | ||
効果測定に関する合意 | |||
繰り返し、前のステップへ戻る、もしくは次のステップへ | |||
ステージ5 事業化 | 組織構築 | メインストリーム顧客基盤の構築 | エバンジェリストユーザーからメインストリーム顧客への移行 |
市場タイプに応じた売り上げ成長の管理 | |||
経営と企業文化の課題 | 取締役会による経営陣の評価 | ||
ミッションを中心とした組織と企業文化 | |||
機能別部門への移行 | 各部門のミッションステートメントの策定 | ||
市場タイプに応じた部門の役割の定義 | |||
即応性の高い部門の構築 | ミッション中心の経営 | ||
情報収集と共有のための文化の創造 | |||
リーダーシップの文化の育成 | |||
繰り返しかさらなる成長か |