私が携わっている新規事業開発プロジェクトでは当然のようにたくさん課題が出ていて、それ自体はいいのですが、メンバがお見合いしてしまったりとうまく推進できず停滞する事がよくあるんです。何が原因なのでしょうか?
よくある悩みだと思います。
原因はスキル不足など多岐に渡ると思いますが、お見合いしてしまったり、せっかく作った体制がうまく機能しなかったりという問題に起因して推進力が出ないという状況はよく見かけます。
プロジェクトの体制を考える上でRRAAというフレームが重要になってきますので、今回はこのRRAAという考え方を説明したいと思います。
プロジェクトマネジメントにおけるRRAAとは?
RRAAとは、Role(ロール:役割)、Responsibility(レスポンシビリティ:実行責任)、Accountability(アカウンタビリティ:説明責任/成果責任)、Authority(権限)の4つの要素の頭文字を取って名付けられたフレームを指します。
- Role(ロール:役割)
その名の通り、プロジェクトにおける役割を示します。プロジェクト責任者やプロジェクトマネジャー(PM)、プロジェクトリーダー(PL)、アーキテクト、開発担当者・・・・などの役割ですね。 - Responsibility(レスポンシビリティ:実行責任)
役割の人がどのアクションについて責任を負うのかを定義する項目です。 - Accountability(アカウンタビリティ:説明責任/成果責任)
プロジェクトのステークホルダーに対する報告や、目的や目標の達成に向けてのアクションを定義する項目です。 - Authority(権限)
どのレベルのロールがどのような権限を担うのかを定義する項目です。例えばプロジェクト自体を立ち上げたり止めたりする権限や要員のアサインやプロジェクトリソースを決定する権限などがあります。
プロジェクトがうまく進まない一因には、プロジェクトのステークホルダー間でお見合いが発生し、お互いにボールを持とうとしない事が見受けられます。そのようなプロジェクトの場合、上記のRRAAの定義が曖昧で、且つ、プロジェクトを取り巻く人間にどのロールを割り当てているのかが不明瞭な事が多くあると思います。
プロジェクトのRRAAの例
様々な本を読んでいますが、「プロジェクトマネジメントの基本」という書籍で紹介されているRRAAの例を以下に示します。
Amazonでペーパーバックとして販売されている書籍ですが、非常にわかりやすい解説がされています。
レベル | Role | Responsibility | Accountability | Authority |
---|---|---|---|---|
経営 執行役員など | エグゼクティブスポンサー | ・プロジェクト実施の根拠となる事業計画を策定する ・プロジェクトに資金を提供する ・プロジェクトの実施を決定する | ・プロジェクトによる事業計画の進捗、および、戦略実行状況を経営層へ報告する ・不採算プロジェクトの中止 | ・プロジェクトの実施 ・プロジェクトマネジャーの任命 ・プロジェクト中止の決定 |
機能組織 事業部長、部長など | プロジェクトスポンサー | ・プロジェクトの要求を決定する ・プロジェクトの目的を策定する ・プロジェクト実施のステークホルダーの周知 ・ステークホルダーとの利害関係の調整 | ・事業の業績を上げる ・プロジェクトの目的を実現する ・プロジェクトの状況を上位のロールへ報告する | ・プロジェクト収益モデルの決定 ・プロジェクト諸元の決定 ・プロジェクトマネジャーの選出 ・プロジェクトの実施体制の決定 |
プロジェクト | プロジェクトマネジャー | ・プロジェクト作業を取りまとめる ・プロジェクトマネジメント計画を策定する ・プロジェクトマネジメント計画にそったプロジェクトの管理を行う | プロジェクトの目標を達成する ・プロジェクトの進捗状況をスポンサーに報告する | ・作業方法を決定する ・与えられた資源の活用 |
上記の定義を見てもらうとお分かりになられると思いますが、このレベル感とロールの定義で記載されている実行責任や成果責任・説明責任、権限に記載の内容を、バイネームで誰が担うのかを明確に定義する事が必要です。
また、定義したものはプロジェクトの関係者間で合意形成を図る必要があります。
こうした定義がないと「私の範疇ではない」とか「誰それがやっているはず」のように先入観を持つ事になり、皆が皆、このスタンスでプロジェクトに臨んでいるようであれば、誰一人当事者意識を持ちながら力強くプロジェクトを推進する事ができず、プロジェクトに強い推進力が生まれないという事は容易に想像つくと思います。
また、こうした曖昧さを残した結果においてプロジェクトを推進すると、放棄したロールが抱える責任がタスクと共に特定の人に集まり(大抵はプロジェクトマネジャーに集中してしまう)、プロジェクトマネジャーが本来の自身のミッションに向き合えなくなってしまう状況を作ってしまいます。
こうなると、非常にプロジェクトの目的・目標の達成が危うい危険な状況に陥っていると思います。